ーー遠征騎士団防衛線付近の森にて。魔物の軍勢が信仰を続ける中、白き鎧を身に纏う騎士風の男が、エイブルに差し向けた部下の報告を待っていた。背中には赤き大鎌が。【狩る者】だった。｢遅いな。エイブル如きに何を手こずっているのやら｣エイブルを始末す…

魔物の軍勢が進行を続ける中、【遠征騎士】副団長である屈強なオーガがフィルゼン達のいる国へ訪れていた。彼の名は、サイシン。ナルゼの戦友であり、勇猛果敢に攻め、道を切り開く。団員達からの信頼も厚い。｢サイシン副団長。お待ちしておりました｣｢うむ。…

私はずっと、貧民街を彷徨い続けるただの子供に過ぎなかった。路上で人が餓死するなんて当たり前。国に、人々に。私達は見捨てられた。【見捨てられた街】なんて言われても仕方のない事だった。魔物が出現した時だってそうだった。貧民街には救いの手を差し…

フィルゼンは、木剣を引き抜き、教官と対峙した。候補生達の残留を賭けて。正直、他の候補生達がどうなろうと知った事ではない。自分が残留するための障害になるのなら話は別だ。｢行けフィルゼン！｣｢頑張ってくれ！！｣敵対していたとは、思えない程、候補生…

模擬戦闘訓練は、順当に進み、フィルゼンは既に二勝し、テティも二勝。そして、印象最悪の候補生も二勝していた。だが、これで確実に残留決定だ。｢あいつ…アルドって言うのか｣フィルゼンの独り言に、テティが目を丸くして感心していた。｢へぇー。フィルゼン…

【フィルゼン】 年齢13歳。 貧民街の出身で、死の瀬戸際で今を生き抜いて来た。 【遠征騎士団長】ナルゼに拾われ、最年少で候補生として入団する。 素直になれず、周りに敵を作りやすい性格であり、名前を覚えるのが苦手。 性格に難があるが、生き残る気持ち…

狩る者の目論見通り、【大陸の女神】が戦死した事実は知れ渡り、奮戦していた世界の防衛戦線は衰退し、魔物達の猛威があらゆる国々を蹂躙せしめた。そんな中で、フィルゼンを含む、【遠征騎士】候補生達は、訓練に明け暮れていた。【遠征騎士】騎士団長、ナ…

一筋も光の差さない暗闇で【狩る者】は、あらかじめ立てた計画の再確認をしていた。(【大陸の女神】は始末した。これで、ひとまずの障害は消えた。【大陸最強】のホープもこれで離脱するはずだ)鼻から【大陸最強】のホープを倒そうとしていなかった狩る者は…

東国、ファルド王国避難区画においてーー水色髪のショートツインテールの女の子が避難施設に駆け込んで来る。｢はぁ…はぁ…エイブルさん！いる！？｣｢おやおや…そんなに慌ててどうかしたのかい？フリッシュ｣フィンツの妹であるフリッシュに対して、穏やかな雰囲…

大地を割り、筋肉が悲鳴をあげようとも、正体不明の魔物と激戦を繰り広げる。力量は互角に見えるが、ホープが徐々に押されていった。初撃のダメージが回復しておらず、攻撃を受け止める度に傷口に響く。回復すれば、問題はないのだが、回復する間を与えてく…

ホープが魔物達へと立ち向かうと、兵士達も我に返り立ち向かった。まさにオーガに相応しいとも言える戦い振り。繰り広げる戦い方は、まさに鬼神。｢シネ、ニンゲン｣ニードルマンが【アサシンクロー】を繰り出す。致命傷、もしくは相手を絶命させる。しかし、…

東に位置する、ファルド王国防衛線にてーー。ホープが率いる軍が魔物の軍勢と激戦を繰り広げていた。(3日に渡る不眠不休…。奴らの攻勢は…揺るがず…か)ホープは深い溜息を零す。｢ホープ、兵士達が疲弊しきってる。君も休んだ方がいいよ｣傷を負った兵士達の治…

｢あの子、ただの従者じゃないですね？｣ナルゼがお茶を啜るホープに対して問い掛ける。一目見て、従者の本質を見抜いていた。｢どうしてそう思う？｣｢ははっ、肌で感じました。滲み出る魔力までは隠せませんよ。それに、あの鎧は魔力コントロールするための枷で…

｢随分とここも発展したものだな…｣白のコートに身を包む、長身で豊満な胸、金髪のオーガが街の様子を眺める。｢そうっすね｣兜を身に纏う少年風の従者も頷く。｢おや、ホープさんではないですか。また各国の視察ですか？｣【遠征騎士団】団長のナルゼが声を掛ける…

【遠征騎士団】。 それは、各国を統治した大国ゼバンからあらゆる権限を与えられた騎士である。 国を転々とし、国が抱える問題を調査、解決に導く事を生業とする。 また、軍事衝突の救援任務、犯人を確保といった権限も付与されているため、その国の騎士より…

かつて世界の人々を苦しめた魔物達は、勇敢なる者達の手によって弱体の一途を辿った。大国ゼバンによって、各国は統治され、連合国軍が結成され、平和な未来を約束された。しかし、それは一部の国だけに留まり、魔物達がもたらした甚大な被害は、全て回復さ…