EPISODE6、【ぱっかーん】
ーー遠征騎士団防衛線付近の森にて。
魔物の軍勢が信仰を続ける中、白き鎧を身に纏う騎士風の男が、エイブルに差し向けた部下の報告を待っていた。
背中には赤き大鎌が。
【狩る者】だった。
「遅いな。エイブル如きに何を手こずっているのやら」
エイブルを始末するために、差し向けた部下達が約束の時間を1時間過ぎても戻って来ない。
【狩る者】の筋書きでは、エイブルを始末すればホープの率いる組織は壊滅するはずなのだ。
呆れた様子で、時刻を確認すると、黒の鎧を身に纏う部下達が続々と集まって来る。
「軍団長。【遠征騎士団】、迎撃の準備が完了したようです」
部下の一人がそう述べると、軍団長と呼ばれた【狩る者】は首を傾げる。
「あのさぁ。エイブルを始末しに行った奴らが戻らないんだけど、どう思う?」
狩る者は、報告した部下に尋ねると、部下は直ぐに返答する。
「予想以上に苦戦しているのでは?しかし、万が一にでも我らが敗北するはずがありません」
「どうして?」
「ですから…」
「あー、違う違う。どうして、そう言い切れるのかって聞いてるんだよ」
「我らは選りすぐりの精鋭。そこら辺の軍と一緒にされては…」
「ぱっかーん!」
狩る者が叫ぶと、他の部下達が驚きのあまり、後ずさってしまう。
返答した部下の頭が割れて、血を噴き出したからだ。
「あ…あ…」
「う…」
部下達は言葉を失う。
突如として、部下の頭が割れたのだ。
無理もない。
「君らさぁ、勘違いするなよ。本来、処刑されるはずだった君らを誰が使ってやってると思ってるんだ」
「も、申し訳ありません!」
「じゃあ頼むが、失敗したら…分かるよね?」
部下達は深く頷いて、持ち場へと向かった。
「あの子を向かわせても良かったんだが、手こずってるみたいだしね」
狩る者は、不測な事態に面を食らっていた。
頼みの綱である実力者が何者かに足止めを受けている。
思った通りに事が運ばない事態に落胆した。
※
フィルゼン達が駆ける戦場は、泥沼化しており、乱戦状態に陥っていた。
奮闘する者もいれば、既に命を落とした者さえいる。
気が張り詰めるこの戦場で、サイシンが抜擢したフィルゼン達は予想通りの戦果を上げていた。
「おい、ガキ!あんまし無理すんなよ」
兵士の一人が叫ぶも、フィルゼンは目の前に立ちはだかる魔物を次々と撃破していった。
「次…!」
フィルゼンは、トロルの大振りをかわし、剣で数回足を切り付けると、体勢を崩したトロルの頭を貫き、撃破する。
トロルの屍を踏み越え、スライムナイト3匹が攻撃を仕掛けて来るも、斬り伏せてみせた。
「このまま押し返せっ!」