第7話Re:make・EPISODEフィルゼン
大地を割り、筋肉が悲鳴をあげようとも、正体不明の魔物と激戦を繰り広げる。
力量は互角に見えるが、ホープが徐々に押されていった。
初撃のダメージが回復しておらず、攻撃を受け止める度に傷口に響く。
回復すれば、問題はないのだが、回復する間を与えてくれないのだ。
出血で死ぬか、倒して生き残るか。
選択するのは、後者だ。
ホープは気力を振り絞り、剣で斬りあげると、正体不明の魔物が宙へ浮き上がる。
「ハァッ!!!」
回転しながら、剣で叩き付け、正体不明の魔物は地面に衝突し、着地したホープ目掛けてすっ飛んで来ると、剣を弾かれて岩へと激突した。
嫌な音が全身に駆け巡る。
(肋が…逝ったか…!)
歪む視界に嘔吐し、血も吐き出す。
防御力が高いのが幸いと言えるのか、それとも最悪が。
現状で最悪と言える。
「グオオアッ!!!」
この攻撃を避けられなければ、確実に命を落とす。
「ベホイム!」
ホープは、咄嗟の判断で正体不明の振り下ろした、トドメの一撃を紙一重でかわす。
「ウォォォォォォォッ!!!!」
拳を固めて、全力で顔面を殴り飛ばした。
防御力が攻撃力に転じ、硬さのみで、正体不明の魔物の装甲を上回り、顔面に亀裂を入れた。
すると、黒い煙が亀裂から噴き出し、正体不明の魔物は悶え苦しみ塵となって消える。
「やった…のか?」
「間に合って良かったよ」
そこには、フィンツの姿があった。
「また、お前に救われたな」
ホープは照れ臭そうに軍帽を深く被る。
フィンツが唱えたベホイムによって、九死に一生を得たのだった。
2人は拳を合わせた。
パチ…パチ…。
すると、乾いた拍手が響く。
「やはり、模倣した魔物では倒せなかったか。流石は【大陸最強】と名高い、ホープ殿だ」
銀色の鎧に身を包む騎士風の男。
背中には妖しげな大鎌を背負っていた。
対峙しなくても分かる。
かなりの実力を持った存在だ。
「それに…【大陸の女神】フィンツ殿もいるとは。こちらが負けるのも時間の問題という訳か」
フィンツは、あらゆる傷を治療し、負傷者に寄り添う姿から【大陸の女神】の異名をもつ。
兜の下では、不敵な笑みを浮かべていた。
「何者だ…」
ホープは、剣を拾い上げて構える。
フィンツも身構えた。
「何者だっていいだろう。そうだな、貴様らの命を【狩る者】とでも言おうか」
狩る者は、大鎌に手を掛けて構える。
魔の気配を迸させる、異様な輝きを放つ。
やはり只者ではない。
「この首…易々と獲れると思うなよ」
魔力は尽きかけているが、ほぼ万全の状態。
それに後衛にはフィンツもいる。
万が一にでも負ける確率は低いだろう。
ホープと狩る者が同時に攻撃を繰り出すが、【大陸最強】と名高いホープの方が初撃が速かった。
(このまま、首を撥ねる!)
すると、煙でも斬ったかのように手応えはなく、狩る者が姿を忽然と消す。
「しまっ…」
「…え…?」
狩る者の狙いは、ホープではなく、フィンツだった。
「フィンツ!!」