第二章〜EPISODE4【念の為】

アルバ王国にて。

アルバ王国騎士団】、カラは兵士達の士気を高め、着々と兵器を整えていた。

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「お疲れ様です。カラさん」

アルドが声を掛けると、カラは少し肩を竦める。

「戦争でも始める気か?」

大砲や兵士達の完全武装

そう思わざるを得ない。

「出立前にナルゼ団長が、万が一に備えて、軍備を整えておけって言うものですから…」

「ふぅ…。分かっている。ナルゼの勘は、当たるからな」

「そう言えば…長年疑問だったのですが、ナルゼ団長って何者なんです?」

「…と言うと?」

「昔の事、一切話したがらないし、それに…、俺、一回も戦ってるとこ見た事ないんですよね」

カラの表情が一瞬だけ、強ばった気がした。

「ナルゼにも事情があるんだろうさ。戦っているところなんて、私も見た事ないからな」

普通なら、強さを誇示し、信頼を勝ち取るだろう。

ナルゼの場合、前線に立つ事が殆どなく、的確な指示のみで他の団員達から信頼を得た。

どんなに過酷な戦場でも、冷静さを欠く事なく、勝利に導いて来た。

アルドは、ナルゼの事について、思い悩むと、1つの違和感を覚えた。

【冷静過ぎる】。

と。

今にして思えば、ナルゼは感情の変化がない。

何が起きても、取り乱す事がなかった。

そんなナルゼでも、僅かだが、見せた表情がある。

人の命が散る時だ。

その時だけ、言葉では表せない程の冷たい目をする。

誰かを重ねているような、そんな感じだ。

「考えても仕方ないだろ。そうだ、アルド、
これをテティに渡して来てくれ」

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(城下は、大体の避難は終わったな)

戦争になり得る事を考慮し、あらかじめ国民は避難させている。

何が起きても良いように。

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「よっ、アルドじゃん。こんなとこ来るのって珍しいじゃん?」

「久し振りだな、テティ。カラさんからだ」

テティは、カラから送られた書状に目を通す。

「突撃部隊は、国民の護衛ね」

「前線部隊だが、念のためにか」

テティは、【不死鳥の騎士団】の突撃隊長を任せられている。

「と・こ・ろ・で」

「何だよ」

「フィルゼンと、どうなの〜?最近」

テティは、屈託のない満面の笑みを向けて来る。

「何もねーよ」

「本当に?」

「…飯を食いに行く程度だ」

「ほうほう!」

目を輝かせ、アルドに顔を近付ける。

「うるせーな!」

アルドはテティを無理やり引き剥がして、やれやれといったような表情を浮かべる。

会う度に、フィルゼンの話を出してくるため、相手するのが面倒なのだ。

「まっ。何だかんだ、上手く行ってるようで良かったよ」

「…まぁな」

「さて、フィルゼンの留守でも守りますかね」

「そうだな」