第二章~EPISODE3【定例会】
【定例会】が始まると、護衛の者達同士が張り詰めた空気になる。
嘗められる訳にはいかないのだ。
他の国々が説明を始める中、護衛同士既にいがみ合っている。
大国ゼバン。
武装国家ベスル。
だった。
大国ゼバン、武装国家ベスルは、アルバ王国との関係は良好とは言えない。
大国ゼバンは、アルバ王国の功績を掠めとった事実があり、武装国家ベスルは、アルバ王国騎士団に返り討ちにあった事があるからだ。
(奴が、フィルゼンか…。なるほど、抑えてはいるが相当な魔力を秘めているな)
武装国家ベスルの護衛、明るい茶髪の青年がフィルゼンを見詰めると、自然とフィルゼンが顎を引く。
殺気のようなものを感じたからだ。
(一度、手合わせしてみたいものだ)
大国ゼバンの護衛、メイドと騎士は、上の空であった。
「しかしアルバ王国を再建とは、レスト陛下も実に寛大なお方だ」
国王の一人がフリーデンを見ながら、鼻で笑う。
「こんな少女が率いる国が、傘下に入れるのだからな」
他の国々の王達が嘲笑すると、フリーデンはナルゼを見て小首を傾げる。
何故、笑われているのか分かっていない様子だ。
無理もない。
「お嬢ちゃん。分かるかい?」
国王が馬鹿にした様子で、フリーデンを眺めると、フィルゼンが剣に手を掛けていた。
ナルゼが制止し、首を横に振る。
相手は国王。
下手をすれば戦争になりかねない。
「このような方が、我らの貿易相手だったなんて、対応を考えなければ、なりませんね」
緑のローブを被った少女が口を開く。
国王が睨み付けると、護衛の騎士達が怒鳴る。
「貴様、無礼だぞ!」
すると、少女の護衛であるプクリポが鼻で笑う。
「何か言ってるぜぃ?族長」
「…みたいですね」
少女の名は、フォレ。
西の大森林に点在する部族を統括する族長である。
「貴方達が、食糧難ということで、支援したというのに。他の国を馬鹿にして、恥ずかしくないのですか?」
「言わせておけば…!」
「やめんか」
レストが制止すると、双方が口を閉じる。
(【フォレスト・ガーデン】か。無事に再建して何よりだ)
ナルゼは胸を撫で下ろす。
【フォレスト・ガーデン】。
大森林の部族達の総称である。
この部族達は、精霊の加護を受けており、一人一人の戦闘能力が高い。
先代の族長が病に倒れ、弱体化したという噂が流れたが、フォレと、その護衛達の魔力を感じる限りでは、再建したと判断した。
「こほん。今は、【消失事件】を何とかせねばなるまい」
レストが話を進めると、ザワついた様子を見せる。
「レスト殿。国が丸ごと消失するなんて、有り得る話なのですか?」
国王の一人が口を開くと、レストは首を傾げる。
「現状では、原因は分かっていない。諸君らで有力な情報はないかね?」
他の王達は、頭を悩ませる。
国が丸ごと消失するなんて、聞いた事もなく、
当然、手掛かりはない。
ナルゼを除いては。
アルドこそが、生きた証人なのだ。
【消失事件】には、間違いなく、どこかの国が絡んでいる。
迂闊に話そうものなら、口封じなんて事も有り得るからだ。
「今回も手掛かりは、無いか。今後、無用な争いは控えるように。以上だ」
こうして、何の意味もない【定例会】は幕を閉じる。
※
「先程は、ありがとうございました」
ナルゼがフォレに対して頭を下げる。
「いえいえ、大した事ではありませんよ。わたくしも、族長になってから日が浅く、自身を言われているようで、腹が立ってしまったのです」
フォレが微笑むと、フリーデンも頭を下げた。
「ありがとう!」
「ふふっ。可愛らしい子ですね」
フォレがフリーデンの頭を撫でようとすると、その間を、先程、馬鹿にして来た国王が通り抜ける。
「おっと、失礼」
国王は笑い飛ばして、その場を後にした。
「嫌なやつ〜!」
フリーデンが舌を出す。