第二章~EPISODE2【信じる】
街でフィルゼンが歩いていると、人々は羨望の眼差しを向ける。
「おー、フィルゼン団長。浮かない顔して、らしくないぞ!ガハハ!」
商人は浮かない顔していたフィルゼンを見て、笑い飛ばす。
「ほれ!これ持ってけ!」
リンゴを逃げ渡される。
「…ありがとう」
シャリっ。
リンゴを、ひとかじりする。
「団長さん!たまには、飲みに来いよー!」
「おー!」
「団長さん!お仕事お疲れ様ー!」
「抱っこー!」
今度は、少女達に囲まれる。
「はいはい…」
フィルゼンは、人気者だ。
道行く人達に、声を掛けられる。
あの頃を乗り越えたからこそ、今のフィルゼンがあるのだろう。
「成長しても、やっぱクソガキだな」
「何だ、アルドか…」
そう。
アルドは、助かった。
アルドは、防衛戦以降、かろうじて命を取り留め、今ではアルバ王国騎士団の参謀だ。
「立ち話もあれだ。とりあえず、座ろうぜ」
※
「あれから8年か。早いな」
「確かに…あんたに嫌がらせされた時が懐かしいよ」
「それは…悪かったよ。あん時は…俺だってなぁ?」
「からかってみただけだよ。もう気にしてないさ。頭に水をぶっかけられた時とかな」
「気にしてるじゃねぇか!」
私とアルドは、顔を見合わせて笑い合う。
「しっかし、【定例会】か。あそこは、好きじゃねぇ」
「まぁね」
「お前…、国から離れるのが不安なのか?」
「…正直ね」
「らしくないな。ガキの頃は、もっと生意気だったぜ?」
「うるさいな…」
「胸張って行って来いよ!」
アルドが背中を押してやると、フィルゼンは溜め息を零し、腹を括る。
仲間たちを信じてもいいと。
「ああ。留守は任せた」
フィルゼンはアルドと握手をかわす。
「任せろ!」
※
「えぇー。遊びたいのに!」
アルバ王国王女、フリーデンが駄々をこねはじめた。
「駄目です。王女としての責務を果たして下さい」
ナルゼが優しく言い放つも、言う事を聞かない様子だ。
「フィルゼンも、ご同行しますので」
「ほんと!?」
フリーデンが目を輝かせる。
※
「は?」
「という訳で、頼むぞ」
ナルゼが微笑む。
フィルゼンとフリーデンを乗せた馬車の扉が閉まる。
ベッタリとフリーデンがフィルゼンにくっ付く。
(こういう事かぁーーー…)
フィルゼンは、何故護衛に付いたのが分かった気がした。
フリーデンのお目付き役として、同行するのだと。
※
ーー大国ゼバン城において。
各国の王達が進行役に名を呼ばれ、各々席に着いて行く。
「続きまして、アルバ王国王女、フリーデン様」
「はーい!」
フリーデンが元気良く返事をして、登場すると、各国からは冷ややかな目を向けて来た。
「あれが…王女か?」
「まだ子供ではないか…」
口々に各国の王達が小声で話す。
既に嘲笑されていた。
国を治める者としての威厳の欠片もなく、無邪気にはしゃぐ子供。
当然とも言える。
しかし、見た目でしか判断出来ない者は、その時点で器が知れる。
「今回出席して頂く、7カ国。全て、揃いました」
進行役がそう告げると、大国ゼバン国王、レストが頷く。
「各国に散らばる同志諸君。遠路遥々、よく来てくれた。これより、【定例会】を始める」