第二章~EPISODE2【信じる】

街でフィルゼンが歩いていると、人々は羨望の眼差しを向ける。

「おー、フィルゼン団長。浮かない顔して、らしくないぞ!ガハハ!」

商人は浮かない顔していたフィルゼンを見て、笑い飛ばす。

「ほれ!これ持ってけ!」

リンゴを逃げ渡される。

「…ありがとう」

シャリっ。

リンゴを、ひとかじりする。

「団長さん!たまには、飲みに来いよー!」

「おー!」

「団長さん!お仕事お疲れ様ー!」

「抱っこー!」

今度は、少女達に囲まれる。

「はいはい…」

フィルゼンは、人気者だ。

道行く人達に、声を掛けられる。

あの頃を乗り越えたからこそ、今のフィルゼンがあるのだろう。

「成長しても、やっぱクソガキだな」

「何だ、アルドか…」

そう。

アルドは、助かった。

アルドは、防衛戦以降、かろうじて命を取り留め、今ではアルバ王国騎士団の参謀だ。

「立ち話もあれだ。とりあえず、座ろうぜ」


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「あれから8年か。早いな」

「確かに…あんたに嫌がらせされた時が懐かしいよ」

「それは…悪かったよ。あん時は…俺だってなぁ?」

「からかってみただけだよ。もう気にしてないさ。頭に水をぶっかけられた時とかな」

「気にしてるじゃねぇか!」

私とアルドは、顔を見合わせて笑い合う。

「しっかし、【定例会】か。あそこは、好きじゃねぇ」

「まぁね」

「お前…、国から離れるのが不安なのか?」

「…正直ね」

「らしくないな。ガキの頃は、もっと生意気だったぜ?」

「うるさいな…」

「胸張って行って来いよ!」

アルドが背中を押してやると、フィルゼンは溜め息を零し、腹を括る。

仲間たちを信じてもいいと。

「ああ。留守は任せた」

フィルゼンはアルドと握手をかわす。

「任せろ!」

「えぇー。遊びたいのに!」

アルバ王国王女、フリーデンが駄々をこねはじめた。

「駄目です。王女としての責務を果たして下さい」

ナルゼが優しく言い放つも、言う事を聞かない様子だ。

「フィルゼンも、ご同行しますので」

「ほんと!?」

フリーデンが目を輝かせる。

「は?」

「という訳で、頼むぞ」

ナルゼが微笑む。

フィルゼンとフリーデンを乗せた馬車の扉が閉まる。

ベッタリとフリーデンがフィルゼンにくっ付く。

(こういう事かぁーーー…)

フィルゼンは、何故護衛に付いたのが分かった気がした。

フリーデンのお目付き役として、同行するのだと。

ーー大国ゼバン城において。

各国の王達が進行役に名を呼ばれ、各々席に着いて行く。

「続きまして、アルバ王国王女、フリーデン様」

「はーい!」

フリーデンが元気良く返事をして、登場すると、各国からは冷ややかな目を向けて来た。

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「あれが…王女か?」

「まだ子供ではないか…」

口々に各国の王達が小声で話す。

既に嘲笑されていた。

国を治める者としての威厳の欠片もなく、無邪気にはしゃぐ子供。

当然とも言える。

しかし、見た目でしか判断出来ない者は、その時点で器が知れる。

「今回出席して頂く、7カ国。全て、揃いました」

進行役がそう告げると、大国ゼバン国王、レストが頷く。

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「各国に散らばる同志諸君。遠路遥々、よく来てくれた。これより、【定例会】を始める」