EPISODE8、【作戦開始】
再び、魔物の軍勢が姿を現すと、前線部隊は、右翼側、中央側、左翼側に展開し、それぞれが攻撃地点へと魔物を引き寄せていた。
遠距離攻撃を仕掛けながら、中央側、左翼側は魔物を引き付けてはいるものの、右翼側は魔物の軍勢に運悪く退路を断たれてしまった。
「くっ…」
「退路が…」
兵士達は、じりじりと追い詰められていく。
すると、
「狼牙突きッ!!」
退路を確保するため、中央側からテティが応援に駆け付けて来た。
テティから放たれた【狼牙突き】は、魔物達を直線上に突き抜け排除する。
「今のうちに!」
「す、すまない!」
テティは時間を稼ぐために奮闘する。
槍で魔物の攻撃を弾きながら、迫り来る魔物を突き殺す。
テティのお陰で、右翼側も撤退し始めたのだが、援護に来たテティ自身が魔物に取り囲まれ始める。
「まずいな…」
テティの額からは冷や汗が。
数で圧倒される分、消耗する体力も激しい。
実力があるテティにとっても、苦痛なものである。
そんな時だった。
「ギガスラッシュッ!」
稲妻が迸ると、察したテティは上へと飛び上がり、【ギガスラッシュ】をかわすと、取り囲んでいた魔物達が一掃される。
「助かったけど…危ないじゃない!」
感謝とともに思わず怒鳴る。
「避けると思ったし」
フィルゼンが救援に駆け付けていた。
「本当にもう…、さ!撤退…」
撤退しようとした時、フィルゼンとテティは衝撃音と風圧によって吹き飛ばされた。
※
各部隊が引き付けて来た魔物達が攻撃地点となだれ込んで来る。
「放てッ!!」
指揮官であるカラの合図とともに、大砲が火を噴き、無数の矢が降り注ぐ?
気付いた時には、もう遅い。
魔物達へ容赦のない攻撃。
攻撃し続ける事、数分。
魔物達を全て撃破する事に成功する。
歓喜に満ち溢れる中、カラの元へ血相を変えた兵士が駆け付ける。
「報告します!我らの国付近に魔物の軍勢を確認!」
「何!?」
防衛線をすり抜けて魔物の軍勢が、国に侵攻を開始していた。
「各員に伝えろ、至急応援に向かえ!」
「はっ!」
すると、別の兵士がカラの元へ。
「前線でまだ新兵が戦っています!」
双眼鏡を手に取り覗き込むと、禍々しい魔力を纏ったギガンテスがフィルゼンとテティの前に立ちはだかっていた。
「アルドは私に付いて来い!」
「了解!」
カラとアルドがフィルゼン達の救援に向おうと崖を下り、馬を走らせた。
すると、矢が目の前に突き刺さる。
馬が驚き、カラとアルドは振り落とされ、地面に落下してしまう。
「今度は何だ…」
2人が立ち上がると、目の前に黒の鎧を纏った騎士が5人が姿を現す。
「【遠征騎士】のカラだな?その命…貰い受ける」
騎士の言葉にアルドが反応する。
「遠征騎士だって…?」
ただの騎士だと思っていたアルドは驚いてしまう。
遠征騎士に与えられている権限は、あらゆる国でも通じる。
はっきりと名乗っていれば、兵士も不安をそこまで抱かなかっただろう。
「その情報を知っているとはな。何者だ、貴様ら」
「知る必要はない。ここで死ぬのだからな」
「随分と嘗めた事を言ってくれる…。アルド、先に行け。ここは引き受ける」
カラが剣に手を掛ける。
「しかし、貴女だけでは…」
「邪魔だ。とっとと行け」
「…ご武運を…」
アルドがフィルゼン達の元へ駆け出すと、騎士達が襲い掛かって来る。
それをカラが防ぐ。
「相手は私だろ?」
剣を翻し、ゆったりと構えた。
ふらふらと脱力したような構えに、騎士5人が唖然とする。
命を狙われた状態なのにもかかわらず、カラは焦る素振りも見せないからだ。
「これなら、俺一人でも十分だな」
騎士の一人が嘗めきった態度を取ると、カラは嘲笑う。
「笑わせてくれるなよ。たった5人で、この命を取れる程、易くないぞ?」
「死んで後悔するなよ!」
騎士がカラへと剣を振りかざした。