第二章~EPISODE13【差し迫る危機】
大国ゼバン近郊。
「アルバ王国ですか。中々、面白そうな人達でしたね」
フォレがクスクスっとと笑みを零すと、2人の側近従者は物珍しそうな表情を浮かべた。
「族長が笑うって、マジか?」
側近従者のプクリポ、リバ。
「自分は久し振りに見たかも…」
側近従者のドワーフ、ウズ。
族長であるフォレは、表情筋が硬いのか、滅多な事で笑う事はない。
だから、珍しいのだ。
「…にしてもだ。あの【不死鳥】だっけ?多分だけど俺らより、弱っちくね?大した魔力量でもないしよ〜」
リバは、フィルゼンに魔力感知を掛けたが、凡人と何ら大差ない魔力量だったため、拍子抜けだった。
【大陸最強】のホープさえも凌ぐと言われた実力者と噂されていたが、噂に尾ヒレが付いただけなのだろうと思わざるを得ない。
「リバ。そこが、貴方の悪い癖ですよ。表面だけの情報だけでは、足元を掬われてしまいます。精霊達は、絶え間なく、フィルゼンに反応していましたから」
「本当かよ〜」
「自分の精霊達は、もう一人。【アルバ王国騎士団】団長に怯えていたんだけど…。あの人、何者?見た感じだと、そんなに強く無さそうだったけど…」
精霊達が怯える事は珍しい。
邪悪な物でなければ、反応する訳がない。
なら、ナルゼが邪悪な魔力を秘めているのかと言われれば、本人からは全くと言っていいほど感じないのだ。
「そういや、先代とアルバ王国って、仲が良かったんだろ?なんか聞いてないのかよ」
「父上から何とも…」
「ちぇっ」
フォレの表情が曇った気がした。
すると…。
リバ、ウズの2人は、禍々しい魔力を感じ、フォレを護るようにして身構える。
そこには、黒き鎧を身に纏う騎士の姿があった。
「【フォレスト・ガーデン】族長、フォレだな。大人しく来てもらおうか」
黒き鎧に身を包み、大剣を背負った騎士がそう命じる。
「断ったら?」
フォレが尋ねると、騎士は鼻で笑う。
「貴様の命は保証するが、そこの2人には死んでもらう」
「上等だぜ」
「嘗められたものだね」
2人は精霊達の加護とともに、魔力を解放する。
※
「ふぅ…。早く合流しないと…」
フィルゼンは、ナルゼ達を追い掛けようとした時だった。
「ふ…、【不死鳥】…」
聞こえた声の方に目を向けると、フォレの護衛の一人、リバだった。
しかも、血塗れだ。
「何があった!?」
「黒い鎧を着けた奴に…襲わ…はぁ…はぁ…はぁ…。恥を忍んで…頼み…が…ある…【フォレストガーデン】を…護って…く…れ…」
リバは、懐から翼で象られた転移アイテムをフィルゼンに託し、そのまま力尽きた。
「何だ…?この嫌な感じは…」
フィルゼンは、ナルゼ達にフリーデンの護衛を任せ、リバの遺言の通り、【フォレストガーデン】へと転移した。