第二章〜EPISODE10【未来へ繋ぐ者達】

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「さて…、僕達の組織である【未来へ繋ぐ者達《テスタメント》】も、中々の大所帯になった訳だけど…」

ホープ達の率いる組織である、【未来へ繋ぐ者達《テスタメント》】は、今や大国ゼバンを凌ぐ程の組織となった。

仲間達も増え、エイブルは副官として、毎日激務に追われている。

現在、世界の情勢について意見を交わしている最中だ。

参列者は、

エイブル

アルミスの側近従者であるタキア。

エイブルの護衛部隊だ。

「何か変わった事がある人は…」

すると、薄紫の髪色の、軍人風な装備を纏う少女が挙手をする。

エイブル様、発言の許可を」

「ヨルカ。許可する」

ヨルカと呼ばれた少女は、エイブル直轄護衛部隊長である。

「はっ。各国は至って平和と仰りたい事ではありますが、不穏な動きが…」

「不穏な動き?」

「はい。我らと同盟を結んだ小国や王国との連絡が途絶しています。早急に調査すべきかと」

「しかし、ヨルカ隊長。消失事件の調査で、我々の拠点は手薄になっております。ホープ様の従者とフリッシュ様もご不在。これ以上、戦力を削ぐ訳には…」

護衛部隊の一人が発言する。

消失事件調査のために、各国へ仲間達が散らばっている。

消失事件は、国々が察知することなく、国が消失する。
 
そのためエイブルは、あらゆる人脈を駆使し、各国から情報を得ている。
 
「ここには、ヨルカや護衛部隊がいる。ヨルカの言う通り、今は情報が欲しい。万が一、世界に牙を剥く存在が現れた時、対処できないからね」
 
エイブルは、危惧していた。
 
世界が再び脅かされてしまうのではないかと。
 
人が創り上げる歴史には、光あるところに影が必ず存在する。
 
光当たる者もいれば、影で淘汰されて行く者もいる。
 
それは、決して覆ることはない、理である。
 
手を取り合う事を捨て、未来さえ捨て、世界へ牙を剥く者が現れてしまう。
 
それを、未然に防ぐために、結成されたのが【|未来へ繋ぐ者達《テスタメント》】なのである。
 
遙か昔より、世界をの秩序を裏から支える【影の英雄】達のように。
 
【影の英雄】達は、知る人ぞ知る。

エイブルも、かつて、【影の英雄】の一人に救われた過去がある。

「拠点の警戒は厳に、それぞれの持ち場へ戻る事」

「「はっ!」」

会議を終え、エイブルは、タキアを呼び止める。

「少しいいかい?」

「何でしょうか、エイブル様」

「まだ…アルミスの容態は安定しないのかい?」

タキアは、表情を曇らせる。

8年前、フィンツが戦死したあの日。

仮面を着け、鎌を携えた少女と対峙したアルミスとタキア。

今までの敵が比にならない程、強大で、戦いは熾烈を極めた。

三日三晩にも渡る戦闘は、決着を付ける事に至らず、幕を閉じる。

その際に、敵から受けたダメージのせいもあり、アルミスは体に魔力が巡らず、生命維持装置なしには生きて行くことが出来ない程の重傷だった。

【未来へ繋ぐ者達《テスタメント》】は、フィンツと同様、貴重な戦力を削がれる事となった。

「すみません。私はこれで…」

「すまなかった」

「いえ…」