EPISODE10、【なぜ?】

「ハァッ!」

フィルゼンが剣で斬り付けると、騎士は受け流して、テティの繰り出していた槍を紙一重でかわしてみせた。

互いに距離を取る。

「3人の中で1番腕が立つようだね」

フィルゼンは、剣を握り直すと、騎士は腹を立てながら剣を振りかざす。

「貴様らガキどもに嘗められてたまるか!」

2人の騎士が敗北した事で、この騎士は死ぬ気でフィルゼン達を仕留めようとしている。

現に、候補生の中でも実力者である2人を相手にして互角だ。

しかし、2対1。

分が悪いのは、騎士の方だ。

「テティ。早く片付けて、合流しよう」

「おっけー…」

「ガキどもがっ!」

騎士が立ち向かうと、フィルゼンが懐に入り込み、直ぐに騎士の前から消える。

さみだれ突きッ!」

フィルゼンに気を取られていた騎士は、テティの【さみだれ突き】をまともに浴びる。

そこへ追い討ちで、フィルゼンが【はやぶさ斬り】で仕留めた。

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「よし」

「今、馬を呼ぶから…あれ、アルドじゃない?」

遠目から、アルドが走っているのを確認すると、手を振る。

「ちっ」

フィルゼンが露骨に嫌そうな態度を取る。

テティは、指笛で呼び付けた馬に飛び乗り、フィルゼンも飛び乗ろうとした時だった。

「せめて…一人だけでも!」

虫の息だった騎士が油断していた、フィルゼンに剣を突き出していた。

咄嗟の攻撃に反応出来るわけもない。

「フィルゼン!!!」


「…え?」

フィルゼンは、押し飛ばされ、騎士の攻撃は当たらなかった。

視線を移すとアルドが腹を貫かれていた。

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「うぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

短剣でめいいっぱい、騎士の首元を突き刺すと、騎士は力無く、その場に倒れた。

「はぁ…っ…はぁ…っ…くそっ!」

アルドは血を吐き出し、横たわる。

「アルドッ!しっかりしてっ!」

テティは、傷口に布を当て、止血を試みる。

「どうして…?」

フィルゼンは、突然の出来事に思考が止まりかけていた。

理解出来なかったのだ。

「やっぱり…ガキだぜ…お前は」

「ど…どうして私を庇った!?嫌いなんだろ…?私が…」

「ははっ…。そう思われんのも当然だよな。俺は…お前に死んで欲しく…なかった 」

「なっ…」

言葉を詰まらせる。

「たかが…金なんかのために…捨てて良い命じゃねぇ…だろうが」

ドクンッ。

フィルゼンは鼓動が高鳴ったを感じた。

そう。フィルゼンは、生きるためのお金を稼ぐために命を賭して戦っていた。

アルドは、そんなフィルゼンを見て、いてもたってもいられなかった。

そんな形で命を捨てて欲しくなかったのだ。

「俺は…憎まれて当然だ…だが…約束しろ!必ず生き…ろ」

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ゆっくりと目を閉じる。

(ははっ。力が入らねぇや…。ルイス…ごめんな…クソッタレな兄ちゃんでよ…)


時は、フィルゼンが意識不明のまま、ベッドに横たわっていた頃まで遡る。

フィルゼンに掛けられていた毛布がはだけており、それを見たアルドは、毛布を掛け直すと、ホッとしたような表情を浮かべた。

「へぇ。案外、優しいとこあるじゃん?」

テティの声にハッとした様子で、アルドは何も言わずにその場を立ち去ろうとすると、それをテティが足で入口を塞ぐ。

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「なんだよ…」

「ちょっといい?あんたフィルゼンの事が好きなの?」

「はぁッ!?」

アルドは唐突な発言に驚きの声を上げる。

「あれでしょ好きな子な程、嫌がらせしちゃうってやつ?」

「違ぇよ。そんなんじゃ…」

「隠さなくてもいいのよ〜」

テティがおちょくると、アルドは面倒だと感じる。

「妹と重ねちまってな…」

アルドは、過去を語る。