EPISODE17、【変革】

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「がは…!こんな奴らに…俺の【計画】が…」

狩る者は力無く地面に倒れ、立ちはだかる大国ゼバンの軍勢を睨み付ける。

「やっと倒れたか…」

大国ゼバンの騎士達は、冷や汗を拭う。

軍勢1万に対し、数時間にも渡る激戦。

1人を仕留めるのに手を焼いた。

「くそぉ……」

狩る者の体は、限界が来たかのようにして、ボロボロと崩れ去った。


ーー???

研究室のような場所で、大きな水晶に世界各地の様子が映し出されていた。

それを眺めるのは、白き鎧を身に纏い、背中に大きな赤き鎌を背負う男。

「随分と手こずったじゃないか?」

男が傷だらけの少女に声を掛ける。

「えぇ、まぁ」

狩る者が応援を要請したが、予期せぬ足止めを受け、三日三晩に渡る戦闘を繰り広げていた少女は、静かに溜め息を零す。

「仕留めたのかい?」

「残念ながら決着は…」

「ふむ。あの子も強いからねぇ」

男は、兜を脱ぐと顔が明らかとなる。

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「【狩る者】は負けたのですか?」

「1万の軍勢相手に、半数以上削って力尽きたよ」

「中々やるものですね」

「全くだ。所詮、俺の過去を模倣した分身体に過ぎないけどね」

男は顔を抑えて照れ臭そうにする。

「恥ずかしくて見てられないよ」

「貴方自身ですよ?」

「まぁね」

男は液体が入っている壁ガラスを見る。

「【大いなる計画】は、順調に事が進んでいる。それに器も見つかったしね」

「【災厄の子】ですか…」

「そう。フィルゼンが成長すれば、計画は次の段階に移れる」

【災厄の子】。

かつて世界に災いをもたらした、とある大陸に突如として現れる謎の子供。
膨大な魔力は計り知れない。

男が言うには、それがフィルゼンだという。

「万が一に備えて、この子にも働いてもらわないとね」

液体が入った壁ガラスには、金髪の少女が浮かんでいた。

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ゴポゴポゴポゴポ…。

(フィルゼン…?)

大国ゼバンが【狩る者】を仕留めた後、各地で出現した魔物の軍勢は消失。

戦争を集結させたとして、大国ゼバンは改めて各国からの支持を集めた。

その中でも、

ホープの率いる組織や【遠征騎士団】が残した功績は人々に讃えられた。

【遠征騎士団】が拠点とする名も無い国は、大国ゼバンに認められ、名を返却する。

アルバ王国と。

【遠征騎士団】団長、ナルゼの手記より。

3年という平和な月日は流れ、あの魔物達との戦争以降、世界は変革を遂げた。

ホープさんの率いる組織は、連合国筆頭である大国ゼバンと同等の権力が付与された。

そしてアルバ王国

数年前の戦乱の時代に、大国ゼバンに敗れた小国。

侵略され何もかも奪われたが、先の防衛戦で無事に返却された。

大国ゼバンは納得のいかない様子ではあったが、これもホープさん達のお陰だ。

元々、【遠征騎士団】が結成されたのは、大国ゼバンに奉仕するため。

腑には落ちなかったが、おかげで世界の状況について色々と学ばせてもらった。

これでようやく、俺達も我が王を守り抜く事に専念出来る。

…のだが。

「ナルゼ団長!大変です…!」

騎士の一人が日記を記していたナルゼの元へ駆け込んで来ると、頭を抱える。

「またか…」

「姫様が脱走したぞ!!」

ナルゼが少しだけ頭を悩ませているのが、仕えている王女の事である。

大国ゼバンに敗北して以降、仕えていた国王陛下が病に伏し、国を統治するための重役を担うのが、10歳になったばかりの姫なのである。

「姫様〜!!」

「どこへ行かれたのです!!」

城中を元気いっぱいに走り回り、王室から居なくなる事は多々ある。

「弱ったな…」

ナルゼが頭を悩める理由は、逃げ出したら簡単には捕まらない。

自由奔放、縦横無尽。

兵士や騎士達が予測出来ない程だ。

たった一人を除いて。

しかし、その頼れる人物は、遠征中なのである。

「シルワ、ライゼ…。君たちでも駄目か」

今回、お目付け役として遠征騎士団の中でも精鋭の2人が付き添っていた。

「それが一瞬だったんだよー。目を離した瞬間にコレだもん」

「椅子に座ろうとした瞬間でした」

2人は落ち込む。

「うぉー!?はなせーー」

「はいはい。王室に行ったら離しますよ」

ナルゼや騎士達が捜索している元へ、赤髪の少女が姫を抱き抱えて姿を現した。

「久しぶり。相変わらず、姫様は元気だね」

「おかえり、フィルゼン」

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フィルゼン、16歳。

あの魔物達との防衛戦以来、【不死鳥】という異名で呼ばれる事となった。

アルバ王国を代表する騎士へと成長した。

そして、時代は流れるーーー。